森永博志のオフィシャルサイト

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プロフィール★森永博志 (もりなが ひろし)

日帰り観光と、夜にちょっと仕事のことで用事があって、静岡に行った。

初めて見たのだろうか、大井川の川幅の広さに驚愕した。

日本の川とは思えない。とにかく川原が広い。島田は江戸時代の風情を川原にのこしていた。

人のいない海にも行った。浜は砂ではなく小石なので、体を横たえると陽をうけて熱のこもった石が体をいやしてくれる気がする。

日暮れどき、町にもどり、神社通りにある古書店をのぞいた。勘定台の奥にカルト・ムーヴィー『エル・トポ』のポスターがはってあった。

「めずらしい物がありますね」

と主人に言うと、主人はいまホドロフスキーの自伝を読んでいるところですと、その本を見せてくれる。

こんな本屋には、きっと何か面白い本があるだろうと丹念に本を探した。

田中小実昌の初版本、梶原季之のペーパーバック、寺山修司本、渋澤龍彦本・・・見ていくうちに、その本の背表紙のタイトルが目に飛び込んできた。

『KID僕らの時代に/東京キッド・ブラザース全漂流記録集』!

ぼくが編集した本だ。

現在、執筆中の自伝/70年代篇(パルコ出版)で最近、その本について書いたばかりであった。

制作は1977年。

東京キッド・ブラザースはロックと前衛芝居を合体させた日本初のアンダーグランドの演劇集団だ。欧米でも人気をかちえた。

1970年には主宰者の東由多加と知己になり、その関係もあって出版企画が生まれたのだろう。

キッド・ブラザースのメンバーにはペーター佐藤、下田逸郎、大野真澄、永倉万治らが制作側にいた。

『KIDぼくらの時代』の表紙を飾る写真にはまだ売り出し中の劇団員だった柴田恭兵が中心にいる。

表紙から巻頭のグラフティーを撮ったのは、パリから帰国したばかりの小暮徹である。

レンズにリング状のストロボを装填するという新手法で撮影している。

正面から強烈な閃光を浴びせたモノクロ写真のプリントに、秋山ミチヲが絵の具を用いて着色した。

のちに、小暮徹と秋山ミチヲは『活人』の小泉今日子スペシャルを制作。

ふたりのコラボレーションのはじまりは『KIDぼくらの時代』の、この表紙だったのではないか。

小暮徹が撮った中のグラフィティーも傑作だ。ぼくが最も好きな原イメージがここにある。

東由多加と吉田拓郎、東由多加と沢田研二の対談も収録した。

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