プロフィール★森永博志 (もりなが ひろし)
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ビザール!
ワン公との早朝の散歩で海岸をうろついていて、コンビニに寄り、マガジン・スタンドに目を泳がせていると、ブルータスの表紙が目に飛び込んできた。
珍奇植物の特集だ。
特集タイトルは「珍奇植物 いま一番、モードな園芸」、英語タイトルが「ビザールプランツ・ハンドブック」、表紙を飾るのは珍奇植物の宝庫である南アフリカに自生するゲシリス リネアリス。
軽いショックにうたれた。
というのも、数ヶ月前に大阪に出張に行った折、デコラティブモードナンバースリーの増地さんと初対面し、カフェで雑談するうちに、彼の三重の生家が8000をかぞえるサボテンと珍奇植物のプランツ・ガーデンを経営、そこから僕もかっては幻の花を求めて世界の辺境を旅し、収集欲に憑かれ、ある時期かなりの種類のビザールプランツを育てていたという話に興じた。
特に、ブルータスでも特集している空中植物ことディランジアは、1990年にロンドンの自然史博物館のスーベニア・ショップではじめて目撃、その瞬間に、そのビザールぶりに心奪われていた。
帰国し、すぐ友人の植物商に、ティランジアの情報を求めると、まだ、日本には輸入されていず、しかし望めば、ロスから取り寄せられると聞き、輸入を依頼した。
手にいれたティランジアを都築響一と荒俣宏に見せると、彼らは感嘆し、すぐに奇想植物学会を結成。原宿のギャラリーで展示会を行った。
それにより、いっぺんに、その存在が世に広まり、テレビや雑誌が取材に押し寄せてきた。
ぼくはテレビ番組に出演し解説した。
ティランジアはたちまち流行現象となり、東急ハンズでも売り出され、劇画やテレビ・ドラマにも登場した。住宅や街の商業施設に飾られた。
その後、僕の旅は珍奇植物の発見に心踊らせ、カリブ海の島の電線に大量のティランジアが自生するのを突き止めた。
さらに珍奇植物屋に度々足を運び、コレクションしていった。
そのコレクションとともに何度も雑誌の取材を受けた。
しかし、もとよりコレクションの趣味はなく、物欲は希薄であったので、コレクションは人に譲り、ひとつもなくなった。
そして、珍奇植物のことは忘れてしまった。
それが、増地さんとの会話で、また思い出していた。
そのとき、予感がした、また、ブームが来る、と。
だから、増地さんの生家の温室を見に行く計画を立てていた。
そんな流れのなかで、ブルータスを手にした。
たしかに、それは人気を呼んでいた。
コレクションは手放していたが、オフィスには、人からいただいたティランジアがある。
だいぶ前に、ビザールプランツをテーマにした宇宙もののSF小説を書いてみたが、完成しなかった。
いまも、珍奇趣味は継続し、その対象は隕石だ。
その中に生存していたのかも知れない宇宙的古細菌の研究活動を行っている。
珍奇な石はいくつか所有し、ものによっては、相当な希少価値を持つと、最近、石に詳しい人に驚かれた。
なぜ、人は珍奇なものに惹かれるのか?
最近、田中小実昌さんの本で、タコ八郎の話を読んだ。
やはり、素晴らしいすぎると思う。
飼いならされることのない固有の生き物に人は憧れるのだろう。
タモリも酒場芸人のころは強烈にビザールだった。
人も珍奇である方が、実は自然なのかも知れない。
スクウェアなものほど、退屈で不毛なものはない。
植物も、人の益になるようにと人の手がはいると、途端にスクウェアに堕ちる。