プロフィール★森永博志 (もりなが ひろし)
- TEXT:
- 1
- 2
- 3
- 4
- 5
- 6
- 7
- 8
- 9
- 10
- 11
- 12
- 13
- 14
- 15
- 16
- 17
- 18
- 19
- 20
- Special
- 21
- 22
- 23
- 24
- 25
- 26
- 27
- 28
- 29
- 30
- 31
- 32
- 33
- 34
- 35
- 36
- 37
- 38
- 39
- 40
- 41
- 42
- 43
- 44
- 45
- 46
- 47
- 48
- 49
- 50
- 51
- 52
- 53
- 54
- 55
- 56
- 57
- 58
- 59
- 60
- 61
- 62
- 63
- 64
- 65
- 66
- 67
- 68
- 69
- 70
- 71
- 72
- 73
- 74
- 75
- 75-2
- 76
- 77
- 78
- 79
- 80
- 81
- 82
- 83
- 84
- 85
- 86
- 87
- 88
- 89
- 90
- 91
- 92
- 93
- 94
- 95
- 96
- 97
- 98
- 99
- 100
- 101
- 102
- special 2
- 103
- 104
- 105
- 106
- 107
- 108
- 109
- 110
- 111
- 112
- 113
- 114
- 115
- 116
- 117
- 118
- 119
- 120
- 121
- 122
- 123
- special 3
- 124
- 125
- 126
- 127
- 128
- 129
- 130
- 131
- 132
- 133
- 134
- 135
- 136
- 137
- 138
- 139
- 140
- 141
- 142
- 143
- 144
- 145
- 146
- 147
- 148
- 149
- 150
- 151
- 152
- 153
- 154
- 155
- 156
- 157
- 158
- 159
- 160
- 161
- 162
- 163
- 164
- 165
- 166
- 167
- 168
- 169
- 170
- 171
- 172
- 173
- 174
- 175
- 176
- 177
- 178
- 179
- 180
- 181
- 182
- 183
- 184
- 185
- 186
- 187
- 188
- 189
- 190
- 191
- 192
- 193
- 194
- 195
- 196
- 197
- 198
- special 4
- 200
- 201
- 202
- 203
- 204
- 205
- 206
- 207
- 208
- 209
- 210
- 211
- 212
- 213
- 214
- 215
- 216
- 217
- 218
- 219
- 220
- 221
- 222
- 223
- 224
- 225
仕事をはじめた70年代は深く音楽に関わっていたこともあり、スーパースター級のミュージシャンによくインタビューしていた。
だけど、その仕事への興味がうすれていった。
というのも、有名人の語ることはパターン化してしまう。
一番面白いはずの私生活は有名税ゆえ、不自由を強いられる。
無名の時代は、町で、旅で波乱に富んだ、エピソードにあふれた生活を送っていても、有名になった途端、いわゆる芸能人の暮らしに幽閉されてしまう。
人間関係も同種の人たちに限られる。
自然、話題は音楽活動に限られ、新作のプロモーションに終わってしまう。
どのメディアも同じことしか語らない。
つまりファン以外の人が読んでも何も面白くない読み物になってしまう。
仕事で、お金になっても、充足感は得られない。
それで、自分は新刊『ドロップアウトのえらい人~島に渡る』でもインタビューしたレモン栽培家、カジキマグロ漁師、サーファー&ナチュラリスト、郵便配達のような人に関心が向かった。
今も印刷所の若旦那や大工、ハンバーガー・コック、看板屋、文房具屋をインタビューして本を作っている。
かつて有名人にインタビューした仕事で一番印象にのこっているのは、井上陽水氏の単行本だ。
名古屋、山口県、三宅島へ旅をしながらインタビューした。
はじめの話では上海に渡ってインタビューするはずだったが直前になって陽水氏にキャンセルをくらった。
陽水氏が語ったことを文章におこしてチェックしてもらうと、自分はこんなこと言ったおぼえはないとクレームがつくことも多かった。
「話した通り書いたんです」
と応えると、
「そのままじゃ伝わんないね」
と突かれた。
じゃあどうちがうのか、原文を元に検証することになった。
「井上陽水」と「ゴースト」ライターとの対話である。
その裏話を、終章に全文のせたのである。
DVDについているメイキング映像みたいなものか。
「とらえどころのない」アーティストNO.1だった井上陽水氏の「とらえどころのない」本になった。
題して『綺麗ごと』(集英社・刊)
陽水氏は故・色川武大氏や伊集院静氏と親しくすることによって、世間に対する身の処し方を学んでいたのだろう。
子供時代、粗食に甘んじていた境遇を語ったあと、陽水氏が、
「留置所も何の問題もなかった。なんで、おかわりがないんだろうって思った、HAHA」
といった強烈な発言が随所に散りばめられている。
今でも、自分や社会を語って一番面白いアーティストは井上陽水氏だと想っている。