プロフィール★森永博志 (もりなが ひろし)
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監督の豊田君が、14日から小笠原に行くので、何処に行ったらいいか、と訊いてきた。それは、すべて宮川典継が知ってる。ゾディアックで航行するといいと思います。と返事した。
いちおう、そのむね、典ちゃんに電話すると、なんと、いま東京にいた。しかも、大井町の阪急アワーズ・インに宿泊していた。あと数日、東京にはいるので、会うことになった。
大井町に典ちゃんを訪ねたのは午後一時。2002年からつづけてきて、世界自然遺産登録時に国連から最大の評価を受けたサンクチュアリの活動が林野庁から表彰されることになった。その発案・主導者であった典ちゃんに、このさい、裏話をきいておこうと思いカセットテープ・レコーダーを持参した。
物事には必ず裏があり、逆もまた真なりではないが、裏にこそトゥルー・ストーリーが存在するが、裏を知る者はすくない。ほとんどは表話に踊らされている。テープには四時間分収録できる。その日は、他の用事をいれずに、なりゆきまかせにしていた。
ぼくらは1996年の出逢いのときから話しはじめた。はじめはロンドンと共同制作していたラバーズ・ロックのアートワークのために単身渡った。そのときは典ちゃんには会っていない。その数ヶ月後、今度はアートワークを16ミリ映像制作へと発展させ、撮影隊と渡った。そのとき無人島の南島の丘の上ではじめて言葉を交わした。
その後、16ミリ映像制作は『エデン』というアンビエント・フィルムへと向かい、その仕事で典ちゃんとはつきあいを深めていった。もちろん『エデン』のことは忘れていないが、その制作時にぼくがなんていっていたか、典ちゃんはよくおぼえていて、そのころの意識まで蘇ってくる。
いろんなものを制作した。映像、長編小説、シアター&クラブ、音楽、『パタゴニア・プレゼンツ』、『惑星ボニン』、『人間力』、単行本・・・しかし、はじまりは一本の映像作品。ぼくはプロデュースと脚本担当。監督は関口照生。音楽監督はクマ原田(在ロンドン)。典ちゃんは自然境でのロケをサポートしてくれた。
1996年から二年かけて制作した。そのときのアイデア・メモというか、ナレーションのメモがのこっていた。最後に「ノアの方舟」がでてくる。
典ちゃんは13日の船で帰島する。その船に豊田君も乗る。彼らが小笠原に上陸する14日は、ラッセル・クロウ主演『ノアの方舟』がロードショー公開される日だ。
ホテルのコーヒーショップから、横丁の焼き鳥屋に席を移し、午後十時まで、話しつづけた。