プロフィール★森永博志 (もりなが ひろし)
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6月の沖縄取材旅行から帰京し、3日間自宅にこもり、やっと、自伝の70年代篇を書き上げた。実に、一年近くもの執筆となった。
回想録を書くうえで、いくつか過去の仕事を改めて見てみた。手元にないものは人から借りた。そのひとつが、『フォーライフ・マガジン』。発行元は、フォーライフ・レコード。創刊は1976年。フォーライフ・レコードは、その前年、吉田拓郎、井上陽水、泉谷しげる、小室等ら、フォークのスター、カリスマ、長老らにより創設された独立系レコード会社で、四人がメジャーのレコード会社を脱退し既存の音楽産業に反旗を翻す行動は、社会的事件として報道されるくらい話題になった。
フォーライフ・レコードが自前のメディアを刊行することになり、それが『フォーライフ・マガジン』だった。業界には自分よりも適任と思える先輩がいたのに、自分に編集長の大任がめぐってきた。このへんの裏話も自伝で書いた。26歳のときだった。
アート・ディレクターは田名網敬一。表紙の撮影は、改めて確認したら、なんと、横木安良夫だった。巻頭のグラビアをめくってみる。泉谷と拓郎のモノクロ写真に絵の具で着色したのがカー・イラストレーションの奇才、BOWこと池田和弘だ。矢沢永吉の撮影は鋤田正義だ。ビートルズのポートレイトは合田佐和子だ。おそらく田名網さんの提案を受けての人選だっただろう。
表紙にディランの言葉をのせた。
「ロマンスの時代になりつつある。トルストイはただしかった」
ユーミンは矢沢永吉への想いを語る。
「----歌を書く時、私はいつも自分の空想の中でドラマを作り、そこからイメージをひろけろていくのだけど、昨年書いた『ルージュの伝言』も、実はあなたのイメージをもとに書いたものなのです----」
いま、手元には田名網さんから借りた『フォーライフ・マガジン』が6冊ある。少し怖れも感じながら、1970年代へとタイム・スリップしてみる。何か、面白い視点を見つけるかもしれないし、書き方も。たとえば、70年代に、アーティストたちが、どんな発言をしていたか? 拾い集めてみるのも面白いかもしれない。
田名網さんのコラージュ作品にも出会える。