プロフィール★森永博志 (もりなが ひろし)
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それは海洋世界最大の神秘だった。
深海に棲む巨大生物、ダイオウイカ。ぼくもその実在は疑ってはいなかったが、どこか想像上の生物、たとえば龍のような、そんな存在に想っていた。
しかし、ダイオウイカの、世界初の映像が小笠原の深海で撮影された!
というドキュメント本を読んでいた。
ぼくの本音としては、神秘のままにしてほしかった。
何でもかんでも映像で暴きすぎだ。
それによって生物にストレスを与えているにちがいないので、程がある。
ぼくはこの眼でダイオウイカを見たことはないが、以前小笠原父島の沖合で体長15メートル程のマッコウクジラの大群に舟で接近したことがある。
そのとき全身にはしった畏怖の感情をいまも忘れることはない。
ドキュメント本には、そういう巨大生物への神秘的感情がほとんど語られてなかった。
変な人たちだ。
でも、小笠原の深海にダイオウイカは存在していたようだ。
小笠原は人も素晴らしい。
2003年の秋、電通総研のY氏より、小笠原の父島と母島の島民と本土のエコに関するエキスパートを結びつける『人間力』と題した本を制作して欲しいと依頼された。
小笠原に関する仕事なら検討不要。即承諾した。
電通総研を訪ね、内容の打ち合わせの会議に出席し、Y氏と人間力についてのビジョンを語り合った。
おおよそ以下のような内容だった。
「人間力」とは、人が信念や明確な目的を持って行動することにより、他の人々を触発し、さらに周囲に活力を与える力であり、既存の価値体系では評価し難い創造、建設の力である。
具体的には、「問題を自ら発見し、解決のための強い意志と必要な能力を発揮して行動する」。
「自分の潜在力に頼り、うちより湧き上がったものを信頼して行動する」。
「生じるリスクを把握し、それに伴う責任を自覚して行動する」。
という3ヶ条のもと、停滞した社会に活力を与えるヒントを探ろうという考えだった。
その「人間力」の実在を小笠原に求め、そこに内在する力と本土で生み出されている知恵が連鎖し、共振し合う、合一の理想的コミュニティーを提案して欲しいということだった。
その場で、小笠原に関しては、原点に回帰したような暮らしを実際にしている島民、自然環境と共存したライフスタイルに生きる島民、逆に最新鋭のメカニズムを用いて自然観察をしている来島者らをあげていった。
取材は10日間程だった。
カジキマグロ漁師、檸檬栽培家、天然塩製造者、農民、野生動物研究家、天文学者、看護婦たちを彼らの仕事場を訪ねて取材した。
大洋、ジャングル、無人島、山中、ビーチをめぐる日々だった。
その小笠原編が第一部「内在する力」となった。
に対し、本土の方は「外からの知恵」として、小笠原と深いつながりを持つ建築家、医師、環境コンサルタント、教育者、芸術家たちが、「小笠原こそ地球の持続可能性を考える上で最適なモデルになる」という視点から発言し、ひとつの本がディスカッションの場となった。
いま改めて読みかえしてみると、そのときすでに3・11以降の日本が抱え込んだ国家的障害、環境的苦悩に対する問題解決の道が提案されている気がした。
まさに小笠原は「地球の持続可能性を考える上での最適なモデル」だったのだ。現在の小笠原は父島の山中に通称レインボーバレーという新たなコミュニティーが誕生している。
『人間力』の中に昔の小笠原の学校の写真を掲載した。
そこに人種の多様性を見て、逆に未来を感じた。