プロフィール★森永博志 (もりなが ひろし)
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待ちに待った本がやっと届いた。
久保田二郎・著「鎌倉幕府のビッグ・ウェンズデー」。
サーフィン時代小説だ。
題と原案を考えた。
80年代のはじめのこと。
「BRUTUS」の仕事をよくしていた。
そのひとつに、このWEBでもふれた、三波春夫、村田英雄、三橋美智也御三家のインタビュー特集があった。
当時スネークマン・ショーのプロデューサーであった桑原茂一が、そのインタビューを読んで大爆笑したらしく、「いやー、めちゃくちゃおもしろいね」と電話をかけてきた。
それで、いま角川春樹氏とスネークマン・ショーの映画と書籍をつくろうと話していて、
モリナガ君、何か考えてくれない?と、そのプロジェクトに誘われた。
そこで、歴史ネタのギャグを考えた。
そのなかのひとつが、
<なぜ、鎌倉にサーファーが多いのか?>
↓
<鎌倉時代にすでにサーフィンはあった>
↓
<エッ!?そんなバカな!>
↓
<その時代、蒙古襲来があった!>
↓
<国家防衛のために、鎌倉から武士が九州へと出陣した>
↓
<上級武士は船で海戦にのぞめたが、下級武士は多分、民家の雨戸を外し海に持っていき、それに腹ばいになり、パドリングしながら沖の敵船へと向かった>
↓
<そこに、やってきた神風!想わず、雨戸の上に立ちあがり、いわゆるサーフィンのアクションをした者がいたのではないか>---
その瞬間、サーフィンが誕生した、という話。そして、戦さを終え、鎌倉にもどった第一号サーフィン・サムライは、またの襲来にそなえて、鎌倉の海で、雨戸を改良しながら、波乗り技術の修行に励んだ。
冗談で考えた話なのに、何やらまことしやかに想えてきた。
この話はスネークマン・ショーでは実現せず、結局、その本は核シェルター・カセット・ブック「南海の秘宝」になった。
そのころ、角川書店が「小説王」を創刊する話が生まれ、小説のラインアップを荒俣宏「帝都物語」、羽山信樹「流され者」、中沢新一「ピンボールのシャングリラ」…と決めていくうちに、日本における元祖ロングボード・サーファーであった久保田二郎に、「鎌倉幕府のビッグ・ウェンズデー」を書いてもらおうと思いたった。何でもチャンスは到来する。
久保田二郎初の小説!
「よし、やろう」と大ノリしてくれ、さっそくハワイのオアフ島へ取材に出かけていった。
久保田二郎は、想像力を飛躍させ、鎌倉時代のサーフィン・サムライとハワイの英雄的サーフ王のデューク・カハナモクを結びつけ、とんでもなく奇想天外の歴史小説を書き上げた。
これはハワイでも英語版が出版され、カハナモクの子孫に絶賛されたと、ジローさんは言っていた。
うれしそうに言っていた。
文庫本のデザインは、久保田二郎と良き友であった堀内誠一だ。さし絵も描いている。
ふたりともいまはいない。
改めて読んだ。武士社会にあって何の身分も名もない3人の若者が主人公だった。
彼ら3人は鎌倉で波乗り術を修練し、サーフィンだけが至上の喜びだった。
それは美しい青春小説だった。小説中に誕生した元祖サーファーの3人の、海に寄せる情熱、波乗りの暮らしがロマンチックに描かれていた。
そして、村上水軍と共に、歓喜に満ちたパドリングで蒙古軍の船に奇襲をかける彼らの姿を、久保田二郎は迫真のタッチで描きだし、まるでスペクタクルな海賊映画でも鑑賞している興奮を味わせてくれる。
「血沸き肉躍る!」とはこのことだ。
今の最新のCGを使った映画にしたらすごいだろうな。
「ライフ・オブ・パイ」の嵐のシーンみたいに。
でも、本を読んで想像するだけで充分だ。