プロフィール★森永博志 (もりなが ひろし)
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最新の仕事
最近プロデュースしたクラブです。
普段は隣接するハイタワーゾーンのマイクロソフトやキャノン、ソフトバンク、ソニー、ナイキらのカンパニーのパーティークラブとして機能し、ライブは、これぞといれこめる演目で勝負しています。
以下、ホームページです。
ブラサキ3&長濱治に燃えた夜
女性客たちがとても素敵に見える夜でした。
だれもが、その一夜が格別のものであり、極上の香りを放つ時間に身も心もゆだね、未来へ進もうと気がはたらいているようでした。
客席の先陣を陣どっているのは我らがリアル・ボス、長濱治。
写真家の長さんだ。
長さんと真向かい、ステージにたつのはブラサキ3、しかし、垂れ幕にはbloodestがエル抜けのboodestになり、手塚治虫の『ブッダ』な世界と化けていた。
確かにその夜のヤングコーンは少林寺の高僧のようでした。
ミュージシャンたちと客が同じ気持ちでいっときを共生するのはなかなか至難の技だ。
のってる、とは違う。
もっと運命的なもの。
不特定多数でうごいてる世とは逆の特定少数の、コアなところにしか生まれてこないムードこそが、その夜の輝きでした。
入り口に座り、会計を担当するのはシュールズのオーナーであり、みうらじゅんにも高く評価されたゆるキャラ着ぐるみ界のビビアン・ウェストウッド! 修子さん。
フェイバリット・シンガーをエディット・ピアフとし、ピアノを弾きピアフを歌う修子さんはピアフの化身に見える。
愛する芸術家はイサドラ・ダンカン。悲劇的舞踏家。夫はシンガーミシンの創業者。
だからダンカンに寄せる熱愛から、シュールズには探し集めた本物のアンティークのシンガーミシンが4台もあり、今夜もふたつ寄せ合わせたミシン台の上にターンテーブルとミキサーを設置し、今回の長濱治一夜だけの写真展のディレクターEGが45回転レコードでDJをつとめる。
ステージではヤングコーンが飄々と過ぎ去りし日の自分を語り、『傷だらけの天使』のテーマをプレイする。
壁を埋め尽くす長さんの写真は主にニューオリンズとシカゴのブルースマンたち。
そして荒寥たる風景写真には流れものたちの大陸国家アメリカの真髄が写っている。
ヤングコーンが『バクダッド・カフェ』の話しをしていると、長さんが「そのカフェの写真もあるよ。向こうの真ん中」と指さすと、客は全員振り返り、「おおー」と歓声をあげる。
『バクダッド・カフェ』の主題歌『コーリング・ユー』をプレイする。
歌声よりも歌うヤングコーンのサックス。
切々とサックスは咽ぶ。
凄まじい頽廃感だ。
「サックスはトランペットと違い、木管だから、金管じゃない」と友人のレオが教えてくれる。
「えー! 木管! 知らなかった!」
調べたら、「金属製の木管楽器」「1840年代にベルギーの管楽器製作者アドルフ・サックスが考案」「真鍮製だが、木管楽器の特性を強く持つ」とあるから、やはり感情がほとばしる音は木管的な性格からだろう。
「一番嫌いな曲をやります」とヤングコーンは言ってサンタナの『哀愁のヨーロッパ』をメロメロの調子でプレイする。
ドラム無し故に、いつものブラサキのジャンプ感よりも、音全体はメロウだ。
ウッド・ベースのザ・タケオはエモーショナルにソロ・プレイし、シュウさんは初の作曲ナンバーをプレイする。
演奏の合間にヤングコーンが長さんを紹介する。
長さんは席から立ち、拍手をうけて客席に向かってお辞儀する。
おん年、75歳の長さんは、まったく老いを感じさせず、ステージ背景のアメリカン・ロードのパノラマ写真を数十年も前に疾走するバイクから撮ったという、その活力に満ちた頃と何ら変わらない様子。
店の外、側道の巨大な壁面には長さんが昨年撮ったブラサキ・ライブのスライドが投影され、展示作品のひとつ、ヤングコーンがここの通りとソックリだと驚いたシカゴのストリートの色を深める。
スライドの背後にはインターシティーの摩天楼が聳える。
側道には客たちの車がアメグラのように並ぶ。
客のひとり、松本小雪は「こんなの、東京でここだけね」と路上にたって言う。
1stステージを終えたヤングコーンやザ・タケオ、シュウさんたちも表の路上にたちスライド・ショーを観賞している。
ビームスやアマゾンの方たちも来ている。
ビームスの方は長さんに原宿店での写真展開催の交渉をしている。
奈良部匠平氏も来ている。彼はバークリー音楽大学のジャズ作曲科卒、世界的人気のドラム・タオの音楽監督。
布袋寅泰フリークで印刷所勤務の北爪君、骨董商のリョウヤ、エスニック・レストランの遠藤さん、画家のレオナルド藤井、アート・プロテューサーの亜州中西屋、カメラマンのTAKAMURA、ガーナ通のケイコさん、、、よく知る者、知らぬ者。
EGのDJはビートルズやストレイキャッツやブラックキャッツを放ち、音を浴びながら客は酒のグラス片手に写真を観賞し、iPhoneで記念撮影をしている。
2ndステージは感動を呼び、「いつもと違う」と印象する早乙女道春は、自身のライブ・ドローイングでもいつもと違う筆致を見せる。
ふつふつと湧き上がってくるものがあり、空気が発酵してゆく。
2ndステージが終わり、帰っていく長濱治は「いままで7、8回、この写真展やったけど、今日のが一番いい。結局、こういうところに俺の写真は合うんだね」と車に乗り込んでいき、快速で走り去る。
その光景を見て松本小雪は「カッコイイ!」と快哉をあげる。
ヤングコーンは客と熱心に何かを語り合っている。
北品川のサタデーナイトは更けてゆく。
『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ノースシナガワ』VOL.1、ジャズと写真のセッションに誰もが満ち足りた気持ちになったはず。
人間が生み出すもののなかで、感動が一番尊い。
ブラサキ3は、その境地に達していた。
『月刊智子』ゼロ号トーク&ライブを終えて。
高校のころは智子はザ・タイガースのジュリーに夢中になっていた、という。
二十歳ころはニール・ヤングだ。
ボーイフレンドが高平哲郎のパシリをやっていた関係で、智子は『宝島』の編集部員になった、、、と、トークで明かされていく。
やがて、RCサクセションを追いかける日々がはじまる。
キャメロン・クロウの『あの頃、ペニー・レインと』の少女版を思わせる物語が語られていく。
客席には音楽界の重鎮たちが、智子の話に耳を傾けている。
『月刊智子』の創刊、50名ほどの客が集まった。
音楽関係者以外には、建築家、グラフィック・デザイナー、サラリーマン、画家、飲食店店主、、、多彩だ。
その日の構成を編集長の智子が考えていた。真剣に取り組んでいる。
今井智子&森永博志の30分ほどのトークが終わり、セット・チェンジ、17歳の少女、現役高校生・山崎彩音のライブがはじまる。
ギターを抱え気だるそうな調子で歌う彼女は、客に向かっての媚など微塵もなく、今までのシンガーに見ることのなかった存在感を放ち、ステージを進める。
客との掛け合いなどないが、彼女と客席の間に緊張感を孕んだ異様な密度を持つ空気が生じてくる。
まだ人生観も世界観もない17歳だから、しかし、ライブの場数をふんだことにより身につけた度胸が、リアルな若さの意味を突きつけてくる。
客は息を飲むようにしている。
智子が『月刊智子』をはじめるにあたって、なぜ、彼女を選んだのか、むろん智子がいま一番注目しているシンガーには違いないが、名声やセールス枚数などではなく、そこに忌野清志郎に触発されシンガーになった少女がいることで、清志郎の魂が継がれていくことを示したかったのではないか。
ライブが終わり、智子と彼女のトークになると、シンガーから普通の爽やかな高校生に戻り、その変身は愉快であった。どっちが、本当の彼女か?
智子から事前に聞いていたが、サプライズ・ゲストでクミちゃんがやってた。
今年、35周年を迎えた山下久美子だ。ディレクターだった元ナベプロの さんも来ている。
三人のトークがはじまった。
ニューヨークのパワーステーションでレコーディングしていたころの裏話が語られていく。
ダイアナ・ロス、カーリー・サイモン、ナイル・ロジャース、マドンナ、プリンスたちが登場し、エリア、ダンステリア、パラダイスガレージといったクラブも。
極上の秘話が続く。
そして、35周年を記念して制作されたアルバムには大沢誉志幸との新曲が収録されている。その曲が流れる。
ポップなロックンロールは30数年の歳月の経過を忘れさせるほど若々しく、胸に響く。ある種の永遠感がある。
非常に豊饒な時間をすごした満足感に浸り、一回目の『月刊智子』は無事終了した。
智子の笑顔が何よりの成果であった。
「次、クィーンやろうかな」
と編集長は早くもひとり編集会議に入っていた。