森永博志のオフィシャルサイト

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プロフィール★森永博志 (もりなが ひろし)

取材をうけるにあたって、スイッチの編集部から『SWITCH』が参考にと送られてきた。

「原宿百景」というシリーズものの頁に登場することになり、送られてきた『SWITCH』をひらいて、その頁をみるとピンクドラゴン代表・山崎眞行氏がゲストだった。

ホスト役のKYONKYONとの対談に、


小泉 ここも(PINK DRAGON)そうですけれど、山崎さんのお店って独特の世界観がありますよね。何から発想を得てるんですか?

山崎 僕が表現する物のほとんどは過去の記憶や体験が元になっています。例えば、この店のテーマは“卵”です。幼い頃母が入院していて、入院食として出されるゆで卵をお見舞いに行く僕が毎日もらって食べていたんですが、その卵には金色のシールが貼られていたんです。それが記憶に強く残っていたんですね。


原宿-渋谷をむすぶ裏原通りのCAT STREETは山崎さんが名づけ親だ。

そのCAT STREETの渋谷寄りに、異彩をはなってPINK DRAGONビルは建つ。

竣工は1983年だったか。

そこを訪ねた者なら、誰もが目にするのが2階へのゲート脇にたつ、金の卵タワーだ。

この金の卵タワーは、ビル竣工時ではなく山崎さんのお母さんが亡くなったときにつくられた。

それが、お母さんの想い出、記念碑、墓碑だった。

今日、図書館で、面白そうだなとおもい、大先輩である嵐山光三郎さんの『素人庖丁記』を借りて読んでいたら、卵に関しての記述をみつけた。

〈卵はひとつの生命力である。

卵は生命力の象徴であり、霊魂が宿る容器とみなされてきた。

卵は信仰の対象であり、そこが他の食品とは格が違う。崇高なる神の創造物であり宇宙のシンボルである。

転身、変態、変身というメタモルフォーシスの超自然の力、神の意志がそこに宿っている。

卵に関する民間信仰はどこの地にも豊富にあって、死者へは魂の再生を祈って卵が捧げられてきた。

インドでは死者のへその上に卵を乗せ、中国では死者の手に卵を握らせて葬った。

ローマ人は墓に卵を供えた。

ユダヤ教徒は復活祭のシンボルに卵を使う〉


イヤー、凄い話だ。

卵が。

山崎さんは亡くなった御母堂を想う、祈るような気持から、ふたつの魂をむすぶのは卵だとひらめき、じっさいに卵の塔をたてた。


〈それはおふくろが、ぼくの居場所が空からでもわかるように示す目印だった〉

(山崎眞行『宝はいつも足元に』より)


2009年、約1年ほどかけて山崎さんの初の自叙伝『宝はいつも足元に』を、ぼくが構成の役につき制作した。

山崎さんは本のなかで、幼いころの卵の思い出や、卵の塔について述懐している。

『宝はいつも足元に』のカバーをかざる写真にも、大きく金色の卵が映っている。

今年、クリームソーダは45周年にあたる。

エルヴィス・プレスリー、マリリン・モンロー、ドクロ・マークをアイコンとしてはじまった“町の海賊”たちの歴史は、この黄金の卵の神話に行きついたのだろう。

流行や風潮に迎合せず、45年ひたすら独自のスタイル、やり方をつらぬいてきたその生命力を、黄金の卵は象徴してるのだろう。

『宝はいつも足元に』の中には、45年間の生命力の秘密や秘訣が語られている。

という意味では、この本も卵だった。


写真3