プロフィール★森永博志 (もりなが ひろし)
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「あ、マーチンだ!」
午後4時、銀座界隈裏通りの居酒屋で、ひとり、カウンターに座り飲んでいた。
他に客はいない。
背後の壁には店員いうところの「飾り」のTシャツ、二枚。
MODSとCLASH。
そのTシャツは銀座に不釣り合いな気もしたが、「モッズのメンバーが飲みにくるんです」と店長らしきマッチョ。
斜めに見上げるテレビに、雪害ニュースが終わり、芸能ニュースになり、マーチンこと鈴木雅之と斎藤和義が映った。
マーチンは歌い、斎藤はギターを弾く。
テロップに、35周年記念の新曲発表と出た。
顔を黒く塗っていたシャネルズ時代とラッツ&スター時代のライブの映像も流れた。
銀座の路地でラッツ&スターへ、想いを馳せていく。
半年ほど前、福島から東北道を帰京する途中に寄ったドライブ・インで、ハンチングを被った田代まさしを見た。
数人の男たちと一緒にタバコをふかしていた。
多分、更生施設の人たちだろう。
一瞬、懐かしく思い、彼に声をかけようかと思ったが、やめた。
彼の、その姿が記憶に残った。
昨年末、レッドシューズでXmasパーティーが開催された。
数組のバンドが出演し、ひとつがヤマちゃんこと山崎廣明のダイナミックスだった。
《山崎廣明&ダイナミックス》
ヤマちゃんとひさしぶりに再会した。
元シャネルズのメンバーで、いまもバンド活動を続けているのはヤマちゃんだけだろう。
大所帯の彼のバンドは管楽器編成、ラテン・オーケストラのスィング感に満ちていた。
ヤマちゃんたちはXmasの一夜を陽気にした。
彼と不良仲間たちとギャング・スター風の記念写真を撮った。
ぼくはシャネルズはデビュー時から好きだった。
メンバーたちとも親しくなった。
人気絶頂期、ヤマちゃんを含むメンバーの5人が公演先の群馬県高崎市のホテルで、 女の子と遊んだことが発覚。
女の子たちが16歳だったため、青少年保護育成条例違反の疑いで書類送検され、シャネルズは半年間活動を休止した。
そのニュースを長期滞在していた香港で知った。
東京に戻り彼らのプロダクションの社長に会い、熱く語った。
ーーこのまま沈黙していたら、忘れ去られる。いますぐ、たとえスキャンダルを起こしても、彼らの黒人音楽に寄せる愛情が損なわれることはないし、元々、彼らは大森のワーキング・クラスの不良少年であり、そこから這い上がってきた美しいサクセスストーリーも生きている。
よって、すぐに、本を作ろうと提案すると、「よろしく、お願いします」と刊行が決定し、謹慎中のメンバーたちに会い、インタビューしていった。
さらに、黒人音楽の通人に参加してもらい、彼らのドゥーワップに寄せる純な音楽観を、まるで黒人音楽の百科事典のように掘り下げていった。
ライフ・ストーリーと音楽事典の二本立てで構成することになり、ライフ・ストーリーを本の右サイドから、文字縦組みで読めるようにし、左サイドからは文字横組みで読める、二方向ブックにした。
その本のタイトルを、リトル・リチャーズのインタビュー中に見つけた発言から剽窃した。
それは、スターが事件ですぐ転落してしまう現実に触れ、「STARなんて、ちょっとした過ちで、綴りがひっくりかえりRATSになっちまう」と発言。
ラッツはネズミ。
これだ!
ラッツ&スター!️
本のタイトルにした。
シャネルズは、その後、そのタイトルを新しいバンド名に冠し復活した。
ぼくは名付け親だ。
銀座の居酒屋で思い出していた。
店のスピーカーから大瀧詠一の甘い声が流れてきた。
『恋するカレン』だ。
シャネルズは大瀧詠一の弟分だった。