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クラブシャングリラ6

TACHIKAWA“MICK”NAOKI
&
MORINAGA“MACKENZIE”HIROSHI’S
CLUB SHANGRILA 33
2015年1月12日、13日収録
円かの杜&早雲閣@箱根強羅


pm2:00、西麻布から箱根強羅に二泊する新年会に車で向かった。

二日目の新年会の余興はMが仕込んだポカスカジャンのミニライブ。

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首都高を走行するあたりから、太陽などという情緒感は皆無の、まさに恒星からの爆発的白光を真正面に浴び、何やら、異様である。

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天体に異変でも生じているのではないか?

この日のドライブに、デュアン・オールマンの2枚組アルバム『アンソロジー』を用意していた。

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最近、はまりまくっている。

なかでもまだブルース・シンガーだったボズ・スキャッグスとの『ローン・ミー・ア・ダイム』には、アメリカン・ロックの最良の精神と最高のスキルの融合を感じ、心底魅せられていた。


バリの爆弾テロが世界を騒がしていた。必然、クラシャン2015のしょっぱなのトークは、その話題から。


M (立川直樹):  テロに反対するデモ行進の先頭にフランスの大統領とドイツの首相とイギリスの首相とイスラエルの首相が勢揃いして、あれは変だよね。

(爆発的白光の太陽を見た記憶があるが、それがカイロだったと思い出していた)

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M’(森永博志): それまでのグローバリズムが吹き飛びましたね。

M :  フランスのメディアは元々、辛辣なとこあったからね。

M’:  実は爆弾テロもあった。前、左翼系の雑誌の編集部訪ねたら、爆弾で吹き飛んでた。

M :  テレビ番組でもゲイの奴が出演し、悪意たっぷりに、めちゃくちゃにくさすこと平気でやってた。それが大ウケしてんだよ。そのノリでイスラムをからかっちゃったからさ、本気だから、イスラムは。

M’:  フランスは南太平洋で早くから水爆実験やったり、北アフリカのチュニジアなんて、この眼で見たけど、砂漠にフランスの原発、ものすごい。電気、フランスに送ってんの。チュニジア、イスラムだよ、確か。

(チュニジアのオアシスにあるホテルのプールサイドで見た太陽も爆発的白光を放っていたと思い出す)

M :  にわか知識なんだけど、アルジェリアやモロッコはフランス領だったろ。アルジェリアだけは資源が多いんで、最後まで手放さなかった。62年までフランス領だった。それで結局、『アルジェの戦い』じゃないけど、内戦があって、その時の民族的怨念がいまも残ってて、けっこう、厄介なんですよ。今回のテロの犯人はアルジェリアからの移民2世なんですよ。

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M’:  そうだったんだ。

M :  生まれたのはフランスだったんだけど、親は移民だよ、アルジェリアからの。

M’:  10年ほど前かな、パリに行ったとき新聞読んでたら、テロリストの爆弾を水際で防げなくなって、すでに優秀なイスラムの工作員がパリに潜入し、パリで爆弾を製造してる、という記事。ものすごく技術的に優秀なんだって。外からの脅威じゃなくて、すでに中にいる。でも、これから、パロディ文化は、どうなってくのかな?

M :  タブーに触れたら、まずいけど。パリの新聞は触れちゃったんだよ。

M’:  日本だと、やっぱり、天皇制かな。でも、あれですね、デュアン・オールマンは若くしてバイク事故で死んだのに、ジミヘン、ジャニス、ブライアン・ジョーンズ、ジム・モリスンとかの若くして夭折したロック・ミュージシャンたちのようには語られないですね。天才なのに。

M :  そうだね。ブルース系ではスティーブ・レイボーンの方がよく語られてるよね。


(ウィルソン・ピケット&デュアンの『ヘイ・ジュード』が車内に炸裂!)


M’:  ウィルソン・ピケットに『ヘイ・ジュード』歌わせたのデュアンですよ。それで100万枚売れた。普通は白人が黒人音楽カバーするのに、その逆の、黒人が白人の音楽をカバーするという異例のことです。それをプロデュースしたデュアンは天才です。

M :  これ、マッスル・ショールズ・スタジオでレコーディングしたんだよ。ドキュメンタリー映画にもなってたけど、凄くよかったよ。アレサ・フランクリンが白人のボーヤたちが本格的ブルース演奏すんだってって驚いてるシーンとか。

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M’:  それがデュアン・オールマンだ。ドラムもホーンもめちゃくちゃ凄い。華麗だな。

M :  忌野清志郎はこのホーンに憧れて、ドクトル梅津とかのホーン・セクションとやったんだよ・・・


いちいち感動しながらデュアンを聴き終えたころ、もう、小田原だ。

快晴の冬の日、神峰富士がアフリカの太陽に晒されたキリマンジェロのように視野に出現する。

この瞬間から、感覚のスイッチが切り替わる。

と同時に絶妙なタイミングで、「じゃ、御返杯は、ウィルソン・ピケットで」と、Mのまさかの符合に感服。

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ウィルソン・ピケットを聴きながら、反対車線は帰る車で地獄の渋滞、われらは、ソウルのリズムとともに、スイスイ強羅を目指す。

途中、渓流が凍りついていた。


今日の旅館は〈早雲閣〉〈花扇〉についで、まっちゃん一族がオープンした〈円かの杜〉。やはり、木材が気になる。

到着早々、女将に木材の話を聞く。

目を奪われるのは黒ずんだ神代ケヤキだ。

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これはケヤキの種類ではなく、樹齢3000年を数えるようなケヤキが、火山の噴火で地中に埋れ、何百年の時経て、施設建設などで地中を掘り返したら発見され、銘木として市に出る。

買い集めたその銘木を使って旅館を建てるというコンセプトで誕生したのが〈円かの杜〉だ。

産地は鳥海山がメッカで、銘木市はよく酒田で開かれる。

だから、いつも飛騨高山にいる大旦那は、神代ケヤキのセリの知らせが届くと、飛騨から酒田にトラックで駆けつける、と女将は言う。

個人的には空間デザインというものに、もう飽きているので、なんでも今は素材が肝心という風潮のなかでは、ここに見る木材建築美は、杜という神韻境に身を置く気分だ。

木から木材になっても、木材には生命力が張り詰めている。

だから、空気の作用で木材は暴れもする。その自然の気を扱える職人が大工なのだが、〈円かの杜〉は木材をよく識る大旦那と飛騨高山の大工の名工たちと建設に取り組んだ。


さらに自分に鑑定を依頼された遺物がロビーの一画に展示されていた。

それは、やはり大旦那の自慢のコレクションで、南米標高3800mのチチカカ湖の湖底から発掘されたプレ・インカの遺物だといい、まっちゃんに調査を依頼されたものだ。

水中考古学の専門家に聞くためにiPadで撮影した。

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「なんのための道具か、わかんねんだ」と若旦那のまっちゃん。

「チチカカ湖は行ったことあるけど、凄い湖だったね。富士山よりも上に湖あんだよ」

「それ、聞いてたから、マッケンさんならわかると思ってさ」

「考古学者じゃないからわかんないよ。でも、わかる人、探してみる」

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部屋に入り、部屋付きの露天風呂に浸かり、あがって、丹前羽織って文豪みたいに自伝の著者校正にとりかかる。

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時間に、食事の間に案内されると、カウンター席だっだ。

食す快楽に没頭しながら、箱根は早ければ車で一時間半でこれてしまう、その近さなのに、此処強羅は深山幽谷にいる気分にひたれる、それが魅力だと、まっちゃん夫妻と語る。


黒田料理長はもう見るからに板前の頭領といった風情。

われわれが箸をつけるまでに、想像絶する技が込められているであろう逸品が次々と卓に登場する。

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新年会、初日の夜は色も鮮やかに味覚の神秘境を果てなく彷徨した。


二日目。

宿は新年会会場の〈早雲閣〉に移る。

昼は車で芦ノ湖まで山越えし、イタリアン・レストランでイタリアン・マフィアのように、MとM'とまっちゃんMとマスダMの、Mのカード四枚揃いのタフなランチ。

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食らう様、野盗のよう。

宿に戻り、囲炉裏端で「文豪のように」仕事をしていると、新年会目当ての客が続々やってくる。

京都から響映代表の里中さんがやってきた。

しばし、囲炉裏端で歓談する。


S :  (里中) いつも、楽しみにWebシャングリラ、読んでます。あのル・クレジオの小説は買って読みました。面白かったですね。最近、ああいう面白い本、ありますか?

M’:  ありますね。アメリカ南部小説っていうんですかね。ピーター・マシーセンの『黄泉の河にて』は抜群に面白い。

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あと、アフリカもので、これは有名だけど、トム・ジョーンズの『コールド・スナップ』も抜群に面白い。でも、本は、面白いの見つけ出すの、根気いりますね。なかなか、ないです。

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S :  森永さんはいまでも原稿手書きですか?

M’:  いや、いまはiPadです。酔って、何度も落としてるんで、ボロボロ。アナログは、クラシャン・トーク録音するときのカセット・テープ・レコーダーです。

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S :  写真で見ました。もう、ああいうの使ってる人はいませんね。

M’:  ですね。最後のテープ・レコーディング・エディターかも知れません。それで、テープは自分で、紙にボールペン走らせて書き起こすんです。その地味な作業しながら、構成を考える。だから、手間と時間はかかる。

S :  そうですか。おそれいりました。


酒宴の間には、里中さん、ベターデイズのデザイナーの大久保君、そしてポカスカジャンのふたりが加わる。

ポカスカジャンは喰始主宰のワハハ本舗所属の音ネタ・ギャグの三人組。ボーカル&バケツドラムの大久保ノブオ、ボーカル&ギターのタマ伸也、同じくボーカル&ギターの省吾。しかし、今日はタマ伸也、葬儀出席のため欠員。

2014年のフジ・ロックに出演、サブ・ステージに5千強の動員記録を作る。

喰始は、旧知の仲だが、このクラシャンのファンだと、Mから聞いた。

新年会のライブ前にボカスカジャンは抱腹絶倒する側に!


M :  これ、マッケン、好きだと思うよ。

M’:  (献立見て)海老黄味揚げ煮。

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S :  (里中)京都に割烹トンカツ屋があって、そこ、トンカツだけでなく、伊勢海老、鮑も揚げて食べさせる。邪道ですね。

M’:  京都でトンカツなんて難しいんじゃないの?

S :  難しい。

M :  京都には豚文化ないんですよ。

M’:  イスラムみたいだね。

M :  京都は肉といったら牛肉です。

M’:  どうやって食べるの?

M :  すき焼きかオイル焼き。基本的にはすき焼きだな。京都の〈三島亭〉のすき焼きはほんとにうまい。肉をあんまり食べないぼくが、あそこだったら、お代わりする。

M’:  ホルモンも食べる?

M :  食べる。でも、豚は食べない。

M’:  やっぱ、不浄なのかな。

M :  3月18日に、〈円かの杜〉で日本酒ナイトやるから、マッケン、おいでよ。千恵蔵の仕切りで。それ【春の悦楽】という題で、今日、ぼくがタイトル、つけた。

M’:  やっぱ、旅館の飲食って、何が快楽かって、飲んで食べて満足したあと、そのまま風呂入って、あと寝ちゃえばいい。家、帰んなくていいんだもん。こんな快楽ないよ。それ、やっぱ、日本酒に限る。焼酎じゃ、ダメだね。

M :  焼酎はダメ。今日、いまマッケンが書いてた自伝の一部、読んだら、ぼくもでてきてね。

M’:  タイトル、『あの路地をうろついてるときに夢見たことは、ほぼ叶えている』っていう。ミックとぼくが出会うところは見ようによっては、かなりヤバイ。

M :  だってさ、もう、ぼくらこんな感じで45年だよ。

M’:  そう、ミックが20で、ぼくが19。

M :  一度もケンカしたことない。

M’:  ぼくなんて、何度もドタキャンやったのに、ミック、怒んない。

M :  ひどいんだよ、マッケン。中国の青島に一緒に取材に行く日、こいつ、空港に来ないんだから。

M’:  でも、ミックだから、何とかするだろうと。

M :  来ないんなら来ないでしょうがない。

M’:  女の子は何人もそのころから共通してて、趣味、似てんだね。

M :  あるね。

M’:  もめたことないね。

S :  稀有な関係ですね、稀有!

M’:  ミックは、そのころ頭脳警察のプロデュースやってたんだよ。

P :( ポカスカジャンのふたりの発言はPで)ぼくは頭脳警察、大好きでした!

M :  ぼくからするとギャグみたいなバンドだったけどね。

P :歌詞とか冷静に見ると凄いですよ。

M’:  一昨年、長野のロック・フェス行ったら、頭脳警察でてて、パンタ、客のいない山のなかで、銃をとれって叫んでたけどね。猟銃かい。

M :  あれ、笑えたな。


早、この段階でトークの行方が怪しい雲行きになってきた。

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P :イメージと実際、ぜんぜん違う人っているよね。

M :  クラプトンがそうだよ。

M’:  クラプトンは、どうしても好きになれない。『冷たくひえた月』でもコケにされてたから、あっちでも、そうなんだろうけど。

M :  クラプトンは初来日の武道館のとき、真っ白いスーツ着て、前の方の客に「ヘイ、ジャップ!」って言ってたんだから。

P : あのクラプトンが?

M :  そう。日本なんて大嫌いだったんだから。

M’:  大ヒットした『コカイン』は、あれクラプトンの曲じゃないよね。

M :  あれは、J.J.ケイル。

M’:  『アイ・ショット・ザ・シェリフ』はボブ・マーリーだしね。


そこに・・・「甘鯛の赤飯蒸しでございます」と美しく甘い声が耳元で響く。囁きは「赤飯のしたに甘鯛がはいってます。うえにすこしわさびがのってございます」続く。ここは、竜宮城か。一瞬の間。で、なんの話だっけ?


M’:  裕也さんは、どうですか? 毎年、ニューイヤー・ロックのオン・エア見てると、裕也さんがいつもPAどなりつけてるんですよ。「コノヤロー、音、おかしいじゃねえか」って。言ってんこと具体的じゃないし、「てめえ、やる気あんのか!」って、訳わかんない。

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M :  そういうとこ、人に見せたいんですよ。でも、ホントは無邪気でいい人ですよ。

M’:  ステージでツイスト踊ると、めちゃくちゃカッコいいですよね。前にハルオ(近田春夫)ちゃんと裕也さんのことはなしたとき、ハルオちゃんはサイバー・ロカビリーやったらカッコいいって言ってた。

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O(大久保) :  浅草国際劇場でフランク・ザッパやったとき、内田裕也も出てて、俺が客席から「引っ込めー」って言ったら、「なんだ!」っ睨み返された。

M’:  大久保くん、裕也さんに「帰れ? 」って言ったんだ。凄いわ!

M :  無邪気で可愛いなと思ったのは、いっとき、裕也さんと加藤(和彦)とレーペル、作ったじゃない? カメリア・レコードだ。

M’:  裕也さんが、ベンチャーズとやった頃かな?

M :  そうそう。カメリア作ってすぐ分裂するんだけど、そのあとぼくが加藤と一緒に仕事したんだよ。で、あのころ、加藤はズズと組んで、『あの頃、マリー・ローランサンと』とか、オシャレ路線になったんです。

P :ニュー・ミュージック系ですね。

M :  それ見て、裕也さんは、ぼくがロックを捨てたと思ったみたいで。クリスマスのころ、〈キャンティ〉にたのんでおいたケーキとローストチキン取りに行ったのね。そしたら〈キャンティ〉に裕也さんがいて、いちおう、「ご無沙汰してます」と挨拶したんだよ。

M’:  そしたら?

M (声帯模写し):  「おう、直樹、ロックンロールわすれないでくれよな」と真顔で言うんだよ。「おう、直樹」って。

P :それ、本気で言ってんですか?

M :  本気、本気。

M’:  それでね、これはムッシュ本人から聞いた話しなんですけど、裕也さんのロック・フェスにムッシュが呼ばれてね。そのとき、ムッシュは拓郎が作詞作曲した『我が良き友よ』が大ヒットしていたころね。それで楽屋で裕也さんに「ムッシュ、フォークかロックか、ハッキリしろよ」って言われて、ムッシュは「フォークのかまやつでーす!」って叫んでステージに出てったらしい。それで『我が良き友よ』歌った。

M :  ムッシュは、そういうところあるね、上いってる。

M’:  ムッシュはホントに不良だもん。前にムッシュと山代温泉行ってね、夜中遅くまで飲んで、騒いでたのに、朝7時の朝食の座敷にムッシュが一番乗りでいて、お膳いっぱいの料理綺麗に平らげてた。いやー、凄いと思った。

M :  京都のホテルでイベントをやったときも、ムッシュ、昼から鉄板焼き屋でステーキ食べて、シャンパン飲んでた。

M’:  裕也さんは体、弱そうだもんね。

P :ホントにムッシュさん、内臓、丈夫です。前、長野のイベントに行ったんです。ムッシュさんも呼ばれてて、それ、素人がやってるイベントなんです。ムッシュさんに楽屋でお弁当食べてもらうのは失礼だからと、近所の喫茶店に案内し、そこでお弁当を食べてもらったんです。でも、田舎なんで、ムッシュさんのことスッカリ忘れてしまって、それで2時間放置。

M :  でも、ムッシュは怒んない。裕也さんだったら大騒動だよ。

P : ムッシュひとりで2時間待ち事件。

M :  裕也さんのエピソードは数限りなくあるんだけど、一番凄かったのは、克美しげるさんが羽田で事件起こして捕まったとき、あったじゃない。

M’:  新宿2町目のソープ嬢、殺害して、車のトランクに隠していた。

M :  そのとき、たまたまホテル・オークラで

『月刊プレイボーイ』の何周年かのパーティーがあって、なんでそんなメンバーでタクシーに乗ることになったのかわかんないんだけど、裕也さんとぼくと黒田征太郎と加納典明が一緒に乗ったんです。

P :武闘派だ。

M :  で、黒田さん、加納さん、ぼくが後ろのシート。裕也さんは、前の席に座った。

M’:  もう、それだけで事件!

M :  それで、運転手がぼくたちの風采見て、業界人と思ったのか、「お客さん、克美しげるってバカだよね。なんであんなことやっちゃったかね」って言ったら、裕也さんは克美しげると同僚なんですよ。それで、いきなり運転手に向かって、(ここで、また、Mの声帯模写で)「テメー、馬鹿野郎!️くるま、とめろ!」って切れたわけですよ。そしたら、運転手が裕也さんに「なんで、おめえに、そんなこといわれなきゃなんねんだ!」ときりかえして、車内騒然ですよ。それで「裕也さん、興奮しないで」って後ろでおたおたしてとめてんのが黒田さんと加納さんのふたり! という。

P : そこで、ブチ切れる運転手も凄いよ。


すでに、ここまでに、羽二重蒸し、飯蛸、雲丹真丈、鰻松前煮、蟹菜の花白酢和え、火取り唐墨と木の芽、鯛、烏賊、鮪角造里、海老黄味揚煮、飛騨ステーキA5等級、大黒湯葉揚げ、甘鯛赤飯蒸し、赤味噌仕立て、飛騨産こしひかり、漬物三種が、笑い止まぬ口に消えている。


M’:  だいたい、裕也さんが騒動起こしてたの六本木ですね。

M :  〈ジェミニ〉だよ。

M’:  藤純子の親戚の富綱がやってたバー。そこに堀切ミロがママでいた。

M :  そこでの話しなんだけど、裕也さんが有働さんと一回もめたことがあってね。裕也さんが若いバンド、コンサートに出してくれっていったのに出さなかったって、裕也さんが「有働、殺してやる」と切れて。

M’:  もう、仁義なき戦いだね。

M :  それでね、ウドーの寺林さんとぼくと〈ジェミニ〉で飲んでた。そこに裕也さんがきた。ぼく、見て、(声帯模写で)「おう、直樹か」って声かけてきて、でも、そこに寺さんがいたから、(声帯模写で)「おう、寺林、なんでお前、直樹と飲んでんだ?」と因縁ふっかけたら、寺さんが「なんか、俺、悪いことしてますか」とかわしたから、そうすると裕也さんは攻撃力なくなって、ひとりカウンターに座って飲みはじめたのね。寺さんもケンカっぱやいから、いつ、ふたりがケンカになるか、どこで、帰ろうかタイミングはかってたんですよ。見ると、裕也さんは「ファック!」とか「殺してやる」とかカウンターでひとりブツブツ言ってる。で、裕也さんがトイレ入ったら、いきなりトイレの中から、バリバリ、ガチャーン!って音がして出てきた裕也さんの手が血だらけ?

M’:  それ、もはや『シャイニング』だよ!

M :  それで、裕也さん、(声帯模写 し)「鏡の中の野郎が、俺を見て、笑ってた」って言うのよ!


いちいち(笑)をいれるのが面倒なんでいれてないが、ここまで、ずっと、あまりに、Mの声帯模写が真に迫っているので、全員、抱腹絶倒し、


P :絶対に、この世代の日本が、一番おもしろかった! 間違いない!

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その後、新年会は酒宴の勢いづいたポカスカジャンの演芸で爆笑の渦につつまれた。

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その夜、われらは箱根で天下泰平の時間を貪っていたのだった。

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翌日、朝、山を下った。

都内に戻り、ぼくはそのまま品川に行き、新幹線米原乗り換え、雪原のなか敦賀に向かった。

原発停止により、およそ8千人の原発労働者が消えた街はゴーストタウンと化していた。

最近親しくなった名歯科医、マー君の医院をたずねた。

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アフリカ、イタリアから取り寄せた銘木をはりめぐらした院内には特注のフラットパネルスピーカーから近藤等則のスタンタード・ジャズが阿片の紫煙のように漂っていた。

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歯の治療を麻酔薬なしで受け完治した、その日の夜、漁師の宿【なかい】で、久しぶりに近海であがったという越前蟹をたらふく食らっていた。






【投稿】


アンリアレイジの邦彦から、クラシャン33を見て、以下のメッセージが届く。


【今日からパリに出発してきます、偶然にも僕らの今回のビジュアルと一緒です。】




ANREALAGE

2015-16 A/W

COLLECTION


「 LIGHT 」



闇を照らせ。


そこにあるものを見るために。


服を照らせ。


そこにないものを見るために。


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