11:30am、新馬場駅前でRと待ち合わせた。
台湾料理屋〈榕樹〉に。麻婆春雨に蟹玉、小籠包。
台湾の軍隊でコック長を高給でつとめていたのが自慢の台湾人の店主に生ビールをご馳走そうしてあげる。コック歴37年、シュウマイのうまさは町の評判だ。
早い時間は地元の職人が客で目だってたが、ランチ・タイムにはいると、前は見ることののなかったスーツ族で満席になってしまう。大繁盛だ。
茶店でおちゃしたあと、となりでソックス屋が閉店セールちゅうだったので、のぞいた。
ここで、日頃はとんと無縁の物欲が発火した。
それが面白かったので記録した。
ソックス屋を物色していると、はじめに〈Labrador Retriever〉の紺色のコットン・ソックス2足500円で購入。Rが買ってくれた。すぐれもんだ。
このソックスが水をひいたか、色を呼んだか?
ほかに物色していると、片隅の籠のなかに、とんでもないものを掘りだした。
ベルトのバックルだ。別段めずらしいものではないが、なかにコンパスと定規を交錯させた例のフリーメイソンの紋章を見つけた。
先月、沖縄の、米軍上陸地であったライカムに、メイソンのロッジを見つけたばかりだったので、こんななんでもない町のなんでもない店でフリーメイソンのバックルを見つけるとは、相手がモノだけど、奇遇だ。
「なんで、フリーメイソンがあるの?」店主に訊いても、答えない。
もう一度、籠をチェックすると、もうひとつフリーメイソン・バックルを見つけ、また店主に「なんであるの?」と訊くと、苦笑いし、「いいよ、いいよ。ただでもってきな」とくれた。ひとつ1000円だった。
バックルは表も裏も手の込んだ造りになっていて、よく見るとシリアル・ナンバーがはいっている。
しかし、やはり、なんでそんなものがソックス屋にあったのか? 謎だ。
この段階で、もう京急蒲田へ行きたくなっていた。
近い将来かくじつに再開発で消えるだろう駅前アーケード。そこにいけば、ぜったいに望むものがある。
京急でむかった。
京急蒲田はひさしぶりだ。はげしくようすがかわっていた。やはり、消えたか。空き地になっていたが、その奥にアーケードが残っているのを知り、胸おどらせた。
入り口の〈サカエ洋品〉を物色。白髪をポニーテールにした品のいいおばあさんが店主。
軒先の吊るしのなかにKeita Maruyamaのダウン・ベストを発見。ほかにRuss~Kのジャケット。2点買う。
店内のショーウィンドーのなかに大量のドール。ものすごい数だ。
「これどしたの?」
店主に尋ねると、「姑が旅に行くと買ってきた。家においとけなくてもってきた」
このなかに、かならず、何かある!
直感がはたらいた。物色すると、すぐ見つけた。
それも、なんてこった!4曲いりのモンキーズのEPだ。ジャケットが田名網さんのコラージュ。どこにも田名網さんのクレジットはないが、これは田名網さんである。「いくら?」「200円です」仰天。即買う。〈サカエ洋品〉では3点購入。
のこるは、ビデオだ。このアーケードには三軒中古ビデオ・ショッブがあり、売られてるビデオの数は10万本ほど、VHSとDVD。エロものが中心だけど、中にはルイス・ブニュエル、一本300から400円。土地柄か、ヤクザものの名作がそろっている。
けっきょく、買ったのは
『one plus one』ゴダール+ストーンズ 480円
『理由なき反抗』280円
『ヴェガス イン スペース』100円
『アンディ・ウォーホルを撃った女』100円
『人斬り与太 狂犬三兄弟』680円
「現代やくざ 与太者の掟』680円
『沖縄やくざ戦争』680円
たぶん出色は、『ヴェガス イン スペース』。
解説★23世紀、U.S.S性交渉号の船長ダン・トレーシーとクルーたちは極秘指令を受け、女陰系のクリトリス星へ。そこは男子禁制の惑星、そこで、クルーたちは、速攻性の性転換ぴるによって20世紀風ショーガールへ変身する☆製作総指揮、セット&ミニチュア制作、ヘアメイク、主演は伝説のドラァグ・クィーン、ドリス・フィッシュ!
ものがたりでした。